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web探訪 みゅーじあむ巡礼日記

ウェブ上にある様々なミュージアムのサイトを、ブラリ探訪します。

「れとろ看板」は永遠に

Posted by 慕辺魅庵(ぼへみあん) on   0 comments   0 trackback

漂泊の旅こそわしの人生そのものなんじゃが、行く先々で出会う日本の風景の美しさには、いつも感動させられるな。え、近所の公園で寝ているところしか見たことがないって? ああ、キミは余計なことを言わんでよろしい。
で、旅先で出会う風景の片隅に、必ずあったのがアレなんだよね。といっても酒の自販機じゃないぞ。アレとはつまり古い建物などに取付けられた、さまざまなホウロウ看板のこと。ほら、キンチョールとかフクスケとかのロゴを薄い鉄板に焼き付けた、いつまでも錆びない昔の看板があるじゃろ。アレじゃよ、アレ。

今回はそんな懐かしいホウロウ看板の大コレクション、『れとろ看板写真館』を訪ねるつもりなんじゃ。何といってもここには日本の広告美術史の一つが凝縮されており、またそれらにより近現代の文化や世相を辿ることも出来る。奥は深いよ。だいいち普通のミュージアムでは取扱わないものを、ウェブ上で立派に展示しているところがステキじゃないの。
じゃあ、レトロな世界にさっそく飛ぶとするか。しかし何かスゴいものが見付かりそうで、ドキドキするなあ。それ、クリック!
http://retro-kanban.com/

ここはずいぶんシンプルなサイトじゃが、無駄を排した質実剛健スタイルってとこかな。トップページがそのまま、さまざまなジャンルのメニュー表になっておる。ではまず、この一番最初の「大塚系れとろ看板」を開いてみると…。
おお、あるある! 浪花千栄子の「オロナイン軟膏」に大村崑の「オロナミンC」など、大塚グループのお馴染みの看板が勢揃いじゃないか。それに松山容子の「ボンカレー」も水原弘の「ハイアース」も、ウヒャー!色っぽい由美かおるの「アース渦巻」もみんな揃っておる。それぞれ展示物ごとに親切な解説も付いてるし、こりゃ言うことなしじゃ。
しかし拡大した画像で見ると、みんな若いよなあ。臨場感が満点で、わしは何だか知らないうちに涙が出て来たよ…。

ちょっと気になるページは「衣料系れとろ看板」じゃ。ここでは学生服などの衣料品の看板を集めてあるが、どれも子供の頃どこかで見たような気がするね。「菅公学生服」はわりと名が知られていたし、「富士ヨット学生服」も覚えがある。で、知らなかったのは「大楠公学生服」や「忠臣学生服」。どちらもずいぶん大層な名前じゃが、わしのような不忠者はちと袖を通しにくいな。
まあ「菅公」の菅原道真は学問の神様だから、学生服のブランド名なのは分かるとして、「大楠公」の楠木正成や「忠臣」大石内蔵助を持って来たのは、やはりひとつの時代という奴なんだろうね。中にはズバリ「大石印学生服」ってのもあるけど、赤穂浪士がこれを着て吉良邸に討入りしたら、忍者みたいで相手も驚くだろうよ。

「食品系れとろ看板」のページも面白い。「真珠漬」のコレクションがやたらと多いが、これは今もある三重県の会社。真珠漬はアコヤ貝から真珠を取り出した後、貝柱を酒粕に漬け込んだものらしいが、何だか美味そうじゃね。食べたら歯がキラリと真珠色になったりして…。あと「竹八漬」は貝柱、海茸、鮑をやはり酒粕に漬けたもので、これは佐賀県の会社。
お菓子の看板はどれも懐かしいね。「フルヤのキャラメル」「いなだ豆」「九十九島せんぺい」「ボンタンアメ」など、いずれも実物を手にした記憶があるし、今でも目にする商品も多いよ。
ちょっと気になったのが「カゴメしいたけのり」。ソースやケチャップで有名なあのカゴメのマーク入り看板なんじゃが、しかし「しいたけのり」はわしも聞いたことがない。というかこんな商品、同社の企業イメージとずいぶんかけ離れているよな。もしかしてこれは、カゴメの“恥ずかしい過去”という奴なんじゃろか?

なんていちいち紹介していたら日が暮れてしまうほど、ここは面白くて興味津々の“ホウロウ看板ワールド”じゃ。「日用品系」「電機系」「調味料系」「文房具系」その他、より取り見取りで、マニアにとってここはまさに宝の山。懐かしいもの、意外なもの、レアなものなど、まるで時代を写す鏡のような看板たちが、きちんと整理され並んでいる。
「テレビはサンヨー」の看板を見たら、旧三洋電機の関係者などは泣くかも知れないし、「東芝のマツダランプ」を見たら多くの人は時代の流れを感じることじゃろう。清酒の看板ならたぶん、誰にも目に焼き付いた故郷の銘柄があるはずじゃね。
こうしたホウロウ看板のレトロな魅力に浸りながら、さまざまな商品や会社の栄枯盛衰、また過ぎ去った時代を偲ぶのも悪くはないとわしは思うんじゃ。なんたってこれらは、明治・大正・昭和の産業史そのものだもんな。それにしてもホウロウ看板の耐久性は、キミの胃袋と同じくらい丈夫で長持ちなんじゃなあ。

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