えんぴつが一本
近ごろ筆記用具といえば、ボールペンやシャープペンシルが当たり前になってしまったが、やっぱり味があるのは鉛筆だよなあ。
指で持ったときに伝わる木の温もりや、紙に書くときの柔らかな感触。特に、削るときに鼻をくすぐる木の香りが、何とも言えないね。わしなんか子供の時分はよく肥後の…、いやカッターナイフで芯を槍の先のように細く尖らせて、どっちが長いか友達と比べ合ったりしたもんじゃ。今から考えるとちょっと危ないけど、良い子は真似しちゃダメだぞ。
まあそんなわけで今回は、『三菱鉛筆博物館』というバーチャルミュージアムを探訪するととにしたよ。わしが愛用する「uni」を販売しているあの会社さ。言っとくけど軍艦巻きのウニじゃないよ。分かったらさっそく、クリックじゃ!
http://www.mpuni.co.jp/museum/index.html
で、メニューを見るとトップにあるのがその「uniの歴史」。どれどれとページを開いてみると、へえ「uni」が初めて発売されたのは昭和33年だったんじゃね。これは東京タワーが開業した年だから、ちょうど映画『三丁目の夕日』の時代で、今からもう50年以上も前になる。思えば息の長い商品なんじゃな、これ。しかし商品名「uni」の語源が、“ただ一つの”という意味の「ユニーク(unique)」だとは、わしも知らなかった。
それにしてもこの商品から感じるのは、ワインカラーと黒というユニークな色の組合せや際立つロゴなど、デザインセンスの良さじゃね。品質の高さもさることながら、これがたぶん時代を超えたロングセラーを生んだ秘密なんだろうよ。飽きのこない高級感は、わしのふだんのファッションとも相通じるものがあるしな。
それから、「プレミアムグッズギャラリー」のページがまた面白いね。同社が配布した文房具などの景品を時代ごとに紹介してあるんじゃが、“こんなのあったっけ!”というモノばかり。誰もが思わずニヤリとしてしまうこと請け合いじゃ。
例えば1972年に出た「ユニ坊主」という消しゴムは、いかにも使いにくそうな大きな球形をしておるが、なんとなく愛嬌のある形がいいね。また、1982年に出た「辞書消しゴム」は辞書のケースに入った消しゴムだし、1984年の「マガジンノート」は表紙が色んな雑誌のパロディになっている素敵なノートじゃ。そのほか「おでん消しゴム」や「サッカーボール消しゴム」など、わしが欲しくなるものばかり並んでいるが、今じゃもう手に入らないんだろうね、こんなのは。ああ、残念!
またここでは、鉛筆工場の見学も出来るぞ。ふつうの鉛筆と色鉛筆に分けて、それぞれの工程を順を追って写真とともに解説してある。
ふつうの鉛筆と色鉛筆の違いはもちろん芯の部分の色じゃが、ふつうの鉛筆が黒鉛と粘土を混ぜて焼き固めるのに対し、色鉛筆はタルクという柔らかい鉱物に顔料やロウにのりなどを混ぜて作るらしい。ただし焼き固めたりしないので、色鉛筆は柔らかいんじゃね。どうりで、使ってるうちにすぐ減るはずだよ。
あと、出来た棒状の芯を溝を掘った板ではさんで接着し、一本ずつ鉛筆の形に削って行くのは同じ工程じゃ。両方とも全体ではけっこうな手間ひまがかかっておるが、これってよほど大量生産をしないと儲からないかもなあ。鉛筆業界も大変だよね、きっと。
サイトには他に「えんぴつなんでもQ&A」という雑学のコーナーもあり、鉛筆の歴史や基礎知識に意外な情報などを紹介しておる。
面白いのは、日本に残る一番古い鉛筆は?という問いの答え。なんと徳川家康の遺品に、オランダ人が献上した一本の鉛筆があるというから驚きじゃ。墨と筆の時代に、家康公はどんな顔してそれを手に取ったのかな? タヌキの落書きでも残っていると楽しいんじゃがね。
それから興味深いのが、一本の鉛筆でどのくらいの距離の線が書けるのか?というシンプルな問い。キミは知ってたかな? 答えは約50kmだというから、これまたビックリじゃ。芯の長さ17.2cmの鉛筆の秘めたポテンシャルには敬意を表したいが、しかしこれってどうやって調べたのかな? 調べた人にも敬意を表したいね、わしとしては。